最初に前所属研究室での研究の継続を行った。ダイニン外腕がレドックスの制御を受けることを細胞モデル運動再活性化の手法を用いて示し、これをまとめた論文が受理された。 続いて、ダイニン外腕に含まれるチオレドキシンの基質の探索に入った。チオレドキシンの活性部位配列CGPCの2番目のCysをSerに改変すると、基質をS-S結合を介してトラップする。LC3/LC5のcDNAにこの変異を導入して大腸菌で発現させ、大量に調製して樹脂に結合させて「変異チオレドキシンカラム」を作成した。これにクラミドモナス鞭毛からの抽出物を通し、還元剤で溶出されるタンパク質が基質の候補である。まず変異LC3カラムから再現性良く溶出されたタンパク質3つを質量分析で解析したところ、全てα/βチューブリン分解産物であった。これらは鞭毛に最も豊富に含まれるタンパク質であるため、残念ながら非特異的結合によるものである可能性が高い。現在この結果を検証中である。 上記のカラム法がうまく働かない可能性が出てきたので、変異LC3/LC5をクラミドモナス細胞で発現させる実験を行っている。生体内で上述のS-S結合を作らせ、タグを用いてLC3/LC5-基質の複合体を精製することを目指す。クラミドモナス用発現ベクターに変異LC3/LC5cDNAを組み込み、クラミドモナスを形質転換した。なお、LC3/LC5を欠失したミュータントが存在しないため、野生株を用いた。現在は大量の変異型LC3/LC5を発現している株を単離するためのスクリーニングを行っている。 並行して、クラミドモナスの機械刺激に対する応答の研究を行った。クラミドモナスはずり応力などの機械刺激が加わると鞭毛打頻度を上昇させる。これにレドックス反応が関わっている可能性を示す予備的データを得ていたため、その検証を行った。残念ながらこの現象とレドックスには直接の関連はなかったが、カルシウムによる調節が関与しているという新しい知見を見出した。この結果をアメリカ細胞生物学会で発表した。
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