研究概要 |
[本年度の成果] i)変異を導入したダイニン型チオレドキシンLC3/LC5による基質トラップ 前年度までに作成した、活性部位のCysをSerに変異させたLC3とLC5のcDNAを、クラミドモナス野生株に導入した。変異チオレドキシンはジスルフィド結合を介して基質をトラップすることができる。この際、前年度に基質の収率が悪かったHA-tagではなく6xHis-tagを融合させた。しかし、明らかに非特異的と思われるタンパク質をトラップしたため、この方法をとりやめ、HA-tagで発現量の多い形質転換体を再スクリーニングした。現在、それらの株を用いてLC3/LC5-基質の複合体の精製を試みている。 ii)チオレドキシン還元酵素(TR)の鞭毛での存在の確認 チオレドキシンだけでなく、その他のレドックス関連タンパク質の鞭毛内での振る舞いを知るべく、TRに着目した。鞭毛内にはダイニン型チオレドキシンが存在するのに、その活性維持に欠かせないTRが鞭毛プロテオームに記載されていなかった。私はクラミドモナスのESTデータベースを検索し、いくつかのTRのうち細胞質性TRであるTR1に着目し、抗体を作成した。するとたしかに鞭毛の細胞質に局在していることがわかった。 [重要性など] i)はチオレドキシン配列とHis-tagの相性の悪さなど予想外の困難があったが、近日中に基質を同定できる予定である。同定できた暁には、モータータンパク質の機能の理解に新しい切り口を提供するはずである。ii)は、鞭毛内に機能的なチオレドキシンが存在することの証左となる。もしも細胞質型チオレドキシンと相互作用するTR1がLC3,LC5とも相互作用するならば、異なるファミリーのチオレドキシンが同一のTRで活性を保つことになり、新たなレドックス・シグナリング経路が発見できたことになる。
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