研究課題
シアノバクテリアからヒトに至るほぼ全ての生物の生命活動は、24時間周期のリズム(概日リズム)を示す。この概日リズムは、地球上の昼夜交替のサイクルに適応するために獲得されてきたと考えられており、概日リズム発振の分子機構を生物時計と呼ぶ。生物時計は光刺激や温度刺激によって時刻合わせを受けることで(リセットされることで)外界の周期的変動(明暗や温度の昼夜交代のサイクル)にリズムを同調させることができる。この特徴は概日リズムを持つ全ての生物に普遍的である。本研究ではこれまで未解明である温度刺激によるリセッティング(温度リセッティング)の分子機構の解明を目的とした。そのために平成18年度は、代表者がモデル高等植物シロイヌナズナで分離した温度リセッティングに異常を示すリズム変異体45-14B7の原因遺伝子のマップベースクローニングを進めた。まず、リズム変異体のホモ個体を異なる系統の野生型と交配してハイブリッドの第二世代(F_2)を得た。多数のF_2個体の概日リズムを1個体ずつ生物発光リアルタイム測定法で測定してリズム変異をホモとして持つと思われる個体を約250個体選別した。そして選別したF_2ホモ個体のゲノムDNAを抽出し、CAPS法によって物理マーカーとリズム変異との組換え率を算出することで、遺伝子座の決定を進めている。この研究と同時並行でシロイヌナズナの糖シグナリング変異体lba1の原因遺伝子をマップベースクローニングし、UPF1 RNAヘリカーゼの変異によって多様な表現型がもたらされていることを明らかにした。また、真核性単細胞緑藻であるクラミドモナスにおいて葉緑体の遺伝子発現を生物発光としてリアルタイム測定する実験系を構築し、葉緑体の遺伝子発現が核にコードされた生物時計遺伝子によって支配されていることを世界で初めて証明した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Molecular and Cellular Biology Vol. 26, No. 3
ページ: 863-870
The Plant Journal Vol. 47, Issue 1
ページ: 49-62