干潟に大型の巣穴を構築するアナジャコ類とユムシ類の高知県における分布状況を確認するために、県内各地の干潟で採集を行ったところ、5種のアナジャコ類(ヨコヤアナジャコ、コブシアナジャコ、バルスアナジャコ、ニホンスナモグリ、ハサミシャコエビ)が分布することを確認したが、ユムシ類の分布は確認できなかった。また、県内5箇所の干潟から26地点を選び、大型底生生物のみを対象に半定量採集を行い、群集構成を多変量解析により分類した結果、県下の干潟生物群集は4つのタイプに分かれ、砂泥質干潟、砂質干潟、ヨシ原、コアマモ場に相当することが明らかになった。 多くの共生生物が利用するアナジャコ科の巣穴について、種間および種内での巣穴形態の変異の程度を明らかにするために、4種の過去の研究例のデータを用いて多変量解析を行った。その結果、4種の巣穴形態は約10%の誤判別率で識別でき、特に、別属のナルトアナジャコは幅の広いU字部を持つことから明快に区別された。アナジャコ属3種では、主に、巣穴下部のI字部の長さで区別ができるが、種内変異も大きいことが明らかになった。なかでも、ヨコヤアナジャコとアナジャコの巣穴はサイズが明らかに異なるものの、形態には類似性が高い。この結果は、2006年日本プランクトン学会・日本ベントス学会合同大会で発表を行った。 県内および瀬戸内海から、アナジャコ類と共生する生物を採集した。特に、シタゴコロガニ(仮称)の形態を精査し、新種記載の準備をすすめた。また、これまで日本で採集例の少ないエビヤドリムシ類Orthione griffenisの標本を多数採集することができた。
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