減数分裂期組換えはSpo11pを含むタンパク質複合体が染色体DNAの二重鎖切断を引き起こすことで誘導され、切断が相同染色体を鋳型とした相同組換えで修復されることで完了する。Spo11pによるDNAの切断は各染色体上で起こるが、切断が高頻度にみられるホットスポットと呼ばれる箇所が集中して存在する領域(ホットドメイン)と、切断がほとんど生じない領域(コールドドメイン)とが特徴的な分布を示す。減数分裂期組換えの位置を制御する機構を明らかにするため、出芽酵母において人為的に染色体の切断を導入するというアプローチを試みた。切断の導入には、減数分裂期特異的に認識配列を切断する部位特異的エンドヌクレアーゼVDEを利用する系と、Ga14pのDNA結合領域を融合したSpo11p(Gal4BD-Spo11p)を利用する系とを確立した。まず、VDEの認識配列あるいはGal4pが結合するUAS配列を染色体に挿入することで部位特異的な切断の導入に成功した。しかし、UAS配列をコールドドメインに挿入した場合にはGal4BD-Spo11pが染色体上にリクルートされるものの、切断は著しく妨げられることが明らかになった。一方、VDEによる切断は染色体領域に関わらず高頻度に見られたことから、Spo11pが特定の領域でのみ活性化される制御が存在する可能性が示唆された。また、人為的な染色体切断はいずれも組換えを伴っており、減数分裂期組換えを人為的に引き起こす手法の確立に成功したといえる。
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