研究概要 |
1.南アフリカ共和国のミーアキャット野生群における社会行動を分析、学会・論文発表した。その結果、繁殖個体と非繁殖個体間には繁殖をめぐる対立があり、その対立は繁殖個体による攻撃個体や繁殖阻止行動、非繁殖個体による服従行動や毛づくろい行動、葛藤解決行動などに反映されていることがわかった(Kutsukake & Clutton-Brock 2006a,b,submitted)。過去の研究では、協同繁殖社会における個体間の協力に関して研究が進んできたが、対立については研究されてこなかった。本研究の結果は、哺乳類協同繁殖種においてみられる強い繁殖の偏りの背景として、個体間の対立が存在することがわかった。 2.真社会性ハダカデバネズミを対象に、ヘルピング行動時の意思決定メカニズムを研究した。 3.動物において、繁殖する個体数や繁殖分布の偏りに、大きな種間・種内差がみられる。この偏りの程度は「繁殖の偏り」と呼ばれ、真社会性社会・協同繁殖社会から乱婚性社会までの多様な社会形態を統一的に理解する軸と考えられている。本研究では、社会性霊長類を対象にオス間の繁殖の偏りの決定要因と影響を分析した。決定要因に関しては、過去に発表された31種のデータを種間比較法によって分析した。その結果、群れ内のオス数が繁殖の偏りに負の影響を与えていた(Kutsukake & Nunn,2006)。この結果は、繁殖の偏りがオス間競争によって決定されていることを示している。また、繁殖の偏りが行動や生態に与える影響を考察し、性感染症の伝播や群れ内の血縁構造に影響を与えていることを明らかにした(Kutsukake & Nunn,in press)。
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