細胞は、外界の環境および遺伝的なプログラムに応じて、分裂を停止しているが(静止期、G0期)生きているという状態もしくは増殖期の状態とを切り替えることができる。しかし、増殖を停止したまま長期間生存し続ける機構、静止期と増殖期を切り替える機構については、依然不明な点が多い。本研究課題では、静止期から増殖期移行時の細胞内タンパク質の量的変動を、質量分析器を用いたプロテオーム解析により網羅的に明らかにすることで、静止期維持(特に染色体構築)に関わる分子とその機能を明らかにしようとするものである。 本年度は、質量分析器を用いたタンパク質の半定量解析システムと、そのタンパク質機能注釈システムの確立をまず行った。このシステムを用いることで、一度に2000以上のタンパク質を同定し、その量的変動についての情報を得ることができるようになり、スループットが飛躍的に向上した。そこで、静止期から増殖期移行時の細胞内タンパク質の変動をプロファイルすることを行った。結果、静止期脱出後に変動するタンパク質群は、その量的変動によりいくつかのグループに分けられることが明らかとなった。この中でも静止期脱出直後に変動するタンパク質群のうち機能未知のものに注目し、遺伝子破壊等の機能解析を行ったところ、静止期の維持を正常に行うために必須のタンパク質を見いだすことができている。現在、更なる機能解析を行っている。また本年度の成果により、細胞分画などを用い、よりターゲットを絞った細胞静止期から増殖期移行時のプロテオーム解析も可能になったと考えている。
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