本研究は、分裂酵母をモデル生物として用いて、G0期(静止期)の維持に必須なユビキチン依存的タンパク質分解経路(以下、UPS)を明らかにすることを目的としている。平成18年度までに、G0期細胞の長期生存維持に、ユビキチン活性化酵素(El)と26Sプロテアソームが必須であることを明らかにした。また、G0期の長期生存維持に必要なユビキチン共役酵素(E2)のスクリーニングを行い、Ubc3がG0期長期生存維持に必須であることを明らかにした。これらの結果を受けて平成19年度は以下の解析をおこなった。 G0期におけるUPS欠損が引き起こす異常を詳細に解析するため、透過型電子顕微鏡による形態観察をおこなった。その結果、G0期のプロテアソーム失活は、(1)部分的な核膜の破綻(2)核内での凝集物蓄積(3)核内での小胞様構造の形成(4)ミトコンドリアの消失を引き起こすことが明らかになった。これらはG0期でのプロテアソーム変異体特異的な表現型であったことから、G0期でのUPSの必須機能はこれらの表現型と密接に関わることが示唆された。次にG0期プロテアソーム変異体でのプロテオーム解析を行った。その結果、G0期でUPSが破綻すると、(1)酸化ストレスによって誘導される蛋白質の量が増加する、(2)ミトコンドリア蛋白質が大幅に減少することが明らかとなった。電子顕微鏡の結果からもミトコンドリアの消失が示されているため、ミトコンドリアに注目し解析をすすめた。その結果、G0期のUPS欠損では、ミトコントリアの選択的な分解が異常に亢進していることが明らかとなった。G0期におけるUPSの必須機能のひとつはミトコンドリアの維持であることが示唆された。以上の結果をもって、現在、投稿準備中である。
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