1 DSE-植物共生メカニズムの解明 シロイヌナズナを供試して、Heteroconiumu.chaetospiraを接種し、共生に至る一連の感染過程を観察したところ、H.chaetospiraの分生子が発芽し、根の表面に付着器を形成した。そして付着器から菌糸が細胞内に侵入し、細胞内菌糸を形成していた。この細胞内菌糸は皮層細胞壁面に再び付着器を形成して細胞内や細胞間隙を伸長して感染部位を拡大していた。また、H.chaetospiraが侵入した植物細胞や組織では壊死反応は認められず、菌糸が植物の維菅束組織まで侵入しないことが確認された。 2 DSEの異なる自然環境下における生態解明 カナダ北西部の亜高山森林で土壌を採取し、培養法および非培養法によりDSEの生態を明らかにすることを試みた。培養法では、現在まで報告のあるPhialocephala fortinii、Cadophora finlandia、Chloridium paucisporum、Leptodontidium orchidicolおよびH.chaetospiraの存在が確認された。特にH.chaetospiraはこれまで畑土壌や樹木の枝、動物の糞などの有機物から分離される腐生菌類として報告されているが、植物根に内生的に感染するDSEとして、カナダ北西部に広範囲に存在することが明らかとなった。また、非培養法では、難分解性有機物を多量に含むピートランド土壌中から環境DNAの抽出に成功した。現在、得られたDNAをクローニングし、rDNAのITS領域をシーケンスし、菌類種の推定を行っている。
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