前年度に引き続き既報の甲状腺ホルモン代謝酵素タイプ1-3(DI1-3)の配列を参考にして、digenerateなプライマーを設計し、ヒラメDI1-3の単離を試みた。複数のプライマーを設計し、アニーリングの温度などの条件を変えてPCRを行ったが、予想されるサイズのPCR産物を得ることができなかった。そこで、まずヒラメ甲状腺ホルモン受容体〓および〓の発現解析を行うこととした。ヒラメ稚魚の各組織から、定法により全RNAを抽出し、市販のキットを用いてcDNAを作成した。ジーンバンクに登録されているヒラメ甲状腺ホルモン受容体〓および〓の配列を参考にして、相補的な配列を持ったプライマーを設計し、ヒラメ稚魚の筋肉、肝臓、鰓、胃、脳、眼球および変態後期(Gステージ)および変態終期(Iステージ)の全魚体における発現パターンをPCRにより調べると、全ての組織および変態期の全魚体について発現が見られた。また、〓サブタイプの発現レベルはαサブタイプのそれよりもやや高い傾向が認められた。次に、ヒラメ仔魚の変態の進行に伴う甲状腺ホルモン受容体の発現変動を調べるため、水産総合研究センター宮古栽培漁業センターにて飼育されたヒラメ仔魚(A-I各ステージ)を採取して、凍結保存し、RT-PCRによる発現解析に供した。前年度の結果と合わせると、変態完了後のヒラメ稚魚では、筋肉、胃、眼球および肝臓において、ヒラメレチノイドX受容体をパートナーとした二量体として機能する可能性が示唆された。本年度の研究により、ヒラメの変態現象に伴う甲状腺ホルモン関連受容体の機能に関する基礎データが得られた。
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