研究概要 |
沖縄島北部ヤンバル地域の森林は,戦後から現在にかけて大規模な伐採が実施されてきた。過去の空中写真からは,皆伐やそれに近い択伐が広域にわたり実施されていたことを確認できた。また農地開発が森林に及ぼした影響も大きいと思われた。1970年代には,東西に湾に持ち,地形的にボトルネックになっている塩屋-平良ライン(通称S-Tライン)付近で森林の耕地化が進み,ライン以北と以南でヤンバルの森林が分断されている様子が伺えた。そしてその後は国頭村を中心に林道開発が進み,生態系へ大きな負荷を与えている様子も見て取れた。 また,琉球大学与那フィールド内の多点調査区をGPSにより測位し,各調査区の露出度(Topographical Exposure Index)をGIS上で求めた。露出度とは,ある点から水平方向を見わたした際に一定半径の円内で360度中何度が開けているかを集計した,尾根と谷を表現する指標である。すると,戦後の大規模伐採後の森林回復パターンは,尾根や谷で大きく異なることが明らかになってきた。1980年と2000年に実施された多点調査の結果を一定の露出度ごとに集計すると,第1優占種であるイタジイは,どのような地形でも胸高断面積合計(ΣBA)が全樹種のΣBAの約50%を占めるが,第2優占種のイジュは谷でΣBAが高くなっていることが明らかになった。また有用樹種のイスノキは,尾根でΣBAが高くなっていた。一方,樹高に着目すると,谷では尾根より平均して約2m樹高が高くなっていた。島嶼のため風の影響を受けやすく,地形も複雑なヤンバル地域の森林では,森林植生はその地形に大きく依存することが示唆された。
|