研究概要 |
本研究では、糸状菌(Aspergillus aculeatus)におけるセルラーゼ遺云子発現誘導機構を解明する事を目的として、まず、本菌の形質転換系を構築する事を計画した。Aspergillus属の形質転換法で選択マーカーとして重用されているniaD, sC, trpC各遺伝子を利用した形質転換法を構築するために、A.aculeatus niaD, sC, trpC各遺伝子欠損株の単離を試みた。自然突然変異により各遺伝子に変異が導入された株をそれぞれ塩素酸、セレン酸、フルオロアンスラニル酸耐性の表現型を指標にしてスクリーニングした結果、約10^6株に1株の割合でniaD及びsC欠損変異候補株が単離された。これらniaD, sC欠損変異候補株の形質は、近縁種由来のniaD, sC各遺伝子の導入により相補された事から、niaD, sC欠損変異株の単離に成功したと結論した。また、niaD, sC欠損株は、それぞれの遺伝子座で大規模な欠失が起きていない事がサザンブロッティング解析により明らかになり、今後各遺伝子座に1コピーで外来遺伝子を導入するための宿主として有効である事が示唆された。一方、トリプトファン要求性を示すtrpC欠損株は単離されなかった事から、今後、trpG遺伝子をクローニングし、相同組換えによる遺伝子破壊によりtrpC欠損株を取得する予定である。 A.aculeatus由来niaD, sC, trpC各遺伝子のクローニングは、縮重プライマーを用いたPCR法、サザンブロッティング法、ショットガンクローニング法を用いて行い、niaD, sC各遺伝子の単離に成功し、全塩基配列を決定している段階である。クローン化された遺伝子を用いて、上述の欠損株を形質転換する事にも成功し、各遺伝子が機能する事も確認した。trpC遺伝子は、一部遺伝子断片を取得した段階であり、今後全長を取得する予定である。
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