研究課題
我が国の暖帯域には、シイ・カシ類をはじめとする多様性豊かな照葉樹林が広く分布している。しかし、照葉樹林を構成するの多くの樹種は成長特性に関して不明な点が多く、照葉樹の育林技術はまだ確立されていないのが現状である。本研究は、照葉樹林の主要な構成種であるシイ・カシ類の種ごとの成長特性を解明し、種ごとに適合した生育環境を検討することを目的とする。さらに、シイ、カシ類の種子を採取し実生を育成し、実生に外生菌根菌を接種して接種後の成長反応を比較、検討する。そして、外生菌根菌の接種技術を応用した苗木の育成技術を確立することを目的とする。カシ類の個々の成長特性を浮き彫りにするため、環境に等しい同一地域に植栽されたカシ類8種(アカガシ・ウラジロガシ・シラカシ・ツクバネガシ・イチイガシ・アラカシ・ハナガガシ・ウバメガシ)の成長と、成長に大きく関わる光合成特性、および光合成能力に大きく関わる比葉面積、葉内窒素濃度を測定した。2006年9月における樹高と胸高直径を測定した結果、イチイガシが最も成長量が大きかったのに対し、ツクバネガシ・ウバメガシの成長量は小さかった。カシ類8種の当年葉の光飽和時における最大光合成速度の季節変化は、ウバメガシを除くカシ7種で10月に最大値(平均165μmol m^<-2>s^<-1>)に達した。ウバメガシは6月に最大値(16.7μmol m^<-2>s^<-1>)に達し、次第に低下した。樹種別ではイチイガシの光合成が高く、光合成速度を葉内窒素濃度で割った窒素利用効率も高く、葉内の窒素を光合成に関わるタンパク質に多く投資していると推察された。カシ7種は冬季も2月において平均9.7μmol m^<-2>s^<-1>と比較的高い光合成能力を維持していたが、葉の入れ替わる3月に入ると大きく光合成速度が低下した。
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