(1)抗生物質に代わる新しい選抜マーカーの作製 前年度までの研究により、GFPやアントシアニンといった可視的マーカーを利用することで抗生物質を利用せずに形質転換カルスを選抜することが可能なごとが示された。今年度は、GFPやアントシアニンを利用した可視選抜系の確立と効率の評価、及びGFP選抜によって得られた形質転換個体の解析を行った。 まず、アントシアニン選抜の材料となるインディカ稲品種カサラスを用いて、アグロバクテリウムを利用した迅速形質転換法の構築を行った。次に、GFPまたはアントシアニン蓄積を指標とした可視選抜実験を行い、その効率を評価したところ、抗生物質選抜では形質転換効率が50-80%であったのに対し、可視的選抜法では10-15%程度であった。さらに、GFP選抜によって得られた形質転換個体の解析を行った。その結果、GFP選抜によって得られた形質転換個体では、抗生物質選抜で得られた個体と比較してGFPタンパク質が10倍以上多く蓄積していた。以上の結果から、GFPやアントシアニンといった可視的マーカーは、形質転換細胞を選抜する指標として利用できるだけではなく、導入遺伝子の高発現個体を効率よく選抜するための指標として利用できる可能性が考えられた。 (2)ジーンターゲッティング(GT)による目的遺伝子の人為的改変 前年度は、DFR遺伝子に対するGT用バイナリーベクターを作製した。また、GTに成功したカルスを可視的に選抜するために35Sプロモーターで転写因子を発現させるコンストラクトを導入した日本晴、コシヒカリを作製した。今年度は、GT実験に用いる形質転換個体の選抜を行った。形質転換イネ150系統(日本晴、コシヒカリ各75系統)を解析し、T-DNAが1コピーで挿入されており、DFR遺伝子の発現が高い系統を日本晴6系統、コシヒカリ5系統を選抜した。
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