結核菌を含むマイコバクテリアが有している特徴的な厚い細胞壁構造と病原性との関連性が指摘されているにもかかわらず、その合成経路には未知の部分が数多く存在し、細胞壁構成に関与する遺伝子・タンパク質の機能や構造について十分な解析が行なわれていないのが現状である。そこで本研究では、細胞壁構成に関与している新規遺伝子・タンパク質を同定してその詳細な機能を明らかにするとともに、細胞壁構成に関連するタンパク質の立体構造解析を行なうことを目的としている。 これまでに細胞壁構成に関与していると予想した遺伝子を破壊した抹をMycobacteium bovis BCG株を用いて作成した。その結果、破壊株のコロニー形態は野生株で見られるRough型からSmooth型に変化していることを示した。そのため、本遺伝子は細胞壁構成に深く関与していることが示唆された。現在は、相補株の作成、並びに野生株と破壊株における細胞壁構造の詳細な違いについての解析を行なっている。 また、維胞壁合成に関わる結核菌由来タンパク質であるRv1110の立体構造解析に着手した。Rv1110は非メバロン酸経路の重要な酵素であり、高等動物には非メバロン酸経路は存在しないことから、本酵素は新規抗結核薬の標的としても予想されている。Rv1110を大腸菌内で大量発現させ、SDS-PAGE上で単一バンドになるまで精製を行なった。ゲルろ過カラムの結果より、Rv1110は溶液中で2量体を形成していることが示唆された。精製したタンパク質を用いて結晶化条件のスクリーニングを行なったが、これまでにX線を用いた測定が可能な結晶は得られなかった。現在は、さらなる結晶化条件のスクリーニングを行なっている。
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