研究課題
本研究は深海底熱水孔環境やその海底下をはじめとした極限環境に生息する微生物資源の獲得・生理生態学的研究・応用開発を目的とするものである。2006年度は、深海底熱水孔環境に棲息する化学合成独立栄養細菌(主にε-およびγ-Proteobacteria)に関して、エネルギー獲得反応(水素酸化、硫黄酸化、硝酸還元、硫酸還元)と炭素固定反応(還元的TCA回路、カルビン回路)に注目し研究を進めてきた。これまでの研究において複数のε-Proteobacteriaについて全ゲノム配列を決定し、本微生物のエネルギー獲得反応(とくに水素酸化と硫黄酸化)にそれぞれ複数の反応機構が存在する事を見いだしている。ゲノム配列を精査することによって得られた知見に基づき、熱水孔環境に見られる様々な大型生物コロニーにおいて優占するε-Proteobacteriaの生理生態学的解析を行った結果、コロニー毎の地球化学的特徴に対応した一次生産活動が生じていることが示唆された。しかしながら、これまでの研究では熱水孔環境に優占する未培養γ-Proteobacteriaの活動を過小評価している可能性がある。そこで研究代表者を主席とする研究航海を伊豆小笠原弧の熱水活動域において実施し、現在その分離培養を試みている。ε-およびγ-Proteobacteria両優占微生物の活動を代謝鍵遺伝子の転写量、代謝鍵酵素活性、代謝基質や代謝産物のフローの3側面から定量することにより、深海底熱水孔環境における微生物一次生産活動およびそれに与える環境条件の影響を解明することが初めて可能となる。以上の結果の一部は、複数の国内学会、国際学会(11^<th> International Symposium on Microbial Ecology等)、国際誌(Appl.Environ.Microbiol.等)等で報告している。
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すべて 雑誌論文 (3件)
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