1.目的 ヒト・ボカウイルス(HBoV)が検出された患者の血清免疫反応を解析し、同ウイルスが呼吸器感染症の原因となっているか否かを臨床像と合わせて検討する。各年齢層の抗体保有率を調査し、初感染の時期を推定する。HBoV VP1以外のウイルス蛋白に対する抗体測定系を新たに確立する。 2.方法 (1)HBoVが検出された患者のペア血清を収集し、抗HBoV VP1抗体価を測定する。 (2)無作為に抽出した各年齢層の血清で、抗HBoV VP1抗体価を測定する。 (3)HBoV VP2蛋白を産生するバキュロウイルスを遺伝子組み換えにより作成し、このウイルスを感染させた細胞を抗原とした蛍光抗体間接法により抗HBoV VP2抗体を測定する。 3.結果・考察 (1)患者ペア血清が4組得られた。急性期血清では全例抗体価は40倍以下であったが、回復期血清ではそれぞれ640倍(1例)、1280倍(2例)、2560倍(1例)と抗体価の上昇がみられた。HBoVが実際にヒトに感染して免疫反応を引き起こしていることが判明した。 (2)0歳から41歳までのヒト血清204検体の抗HBoV VP1抗体価は、40倍以上を陽性とすると145例(71.1%)が陽性であった。抗体保有率は6か月から8か月にかけて低下し、以後漸増して2〜3歳以降80%以上、6歳以降ほぼ100%となり、成人でも90%を越えていた。母親から移行したHBoVに対する抗体は6ヶ月頃にはほぼ消失し、その後2〜3歳頃までに多くの小児がHBoVの初感染を受けることが推測された。 (3)Western Blot法により、HBoV VP2を産生するバキュロウイルスを感染させたTn5細胞にHBoV VP2蛋白が発現していることが確認できた。ヒト血清で抗HBoV VP2抗体の有無を確認したところ、12検体中6検体で抗体が検出された。
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