今年度はウエストナイルウイルス(WNV)粒子の細胞内侵入についての材料及び評価系の作成、確立を中心に行った。 (1)ウイルス粒子の細胞への結合および侵入性の簡便な評価系の確立 感染の危険を避け安全に実験を行うため、envelopeのみからなるsubviral particles (SVPs)を作成し、細胞への結合性を評価した。Vero細胞にSVPsを吸着させた後、抗Eタンパク質抗体(α-E Ab)とフローサイトメーターにより解析した。この方法によりSVPsとVero細胞の結合を検出することが可能となった。また侵入性は、GFP遺伝子を持ったVirus-like particles (VLPs)を作成し、Vero細胞への感染後、GFP陽性細胞をフローサイトメーターで検出することにより評価した。 (2)αVβ3インテグリン(ITG αVβ3)のサラフェンド株以外の受容体としての機能 WNVサラフェンド株の受容体として報告されてITG αVβ3が他のWNV株の受容体として機能するのかを検討した。材料には強毒株であるニューヨーク(NY)株のSVPsとVLPsを用い、抗ITG αVβ3抗体による阻害能を検討したが、結合、侵入性のいずれも阻害されなかった。このことより少なくともNY株においてはITG αVβ3以外の受容体分子の存在が示唆された。 (3)ウイルス結合因子の解析 NY株の細胞への結合、侵入に必要な細胞因子の解析のために、Eタンパク質の可溶性領域であるエクトドメインとHis-tagの融合タンパク質を精製した。また、Vero細胞抽出液を吸着させたELISAプレートにSVPsおよびα-E Abを加え発色させることにより、Vero細胞内の結合因子が検出された。 今年度に得られた評価系や材料を用いて来年度からはウイルス粒子の侵入に必要な細胞内因子の検索及び解析を行う。
|