【目的】脊髄に移植することによって損傷された神経組織の修復する作用のある骨髄細胞や脊髄損傷後に生じる二次損傷を軽減し中枢神経組織を保護する作用のあるAMPA受容体拮抗薬を用いて、中枢神経を再生することによって下部尿路機能や下肢機能にどのような変化をもたらすのか検討した。【方法】雌SDラットを用いて胸髄レベルにNYU impactorを用いて挫傷損傷を作成し、(A)無治療群(n=14)、(B)AMPA受容体拮抗薬(NBQX 15nml)投与群(n=10)、(C)AMPA受容体拮抗薬+骨髄細胞移植群(2x10^6)(n8)において、下肢機能および下部尿路機能について検討を行い、さらに排尿反射経路に関連した腰部脊髄における神経線維の状態について検討を行った。【結果】損傷後8週間にわたって下肢機能はBBBスコアで評価を行ったが、3群間で有意な差は認められなかった。下部尿路機能については損傷後8週目に膀胱内圧測定を行ったが、排尿圧、排尿筋過活動の頻度、残尿量ともに3群間で有意な差を認めなかった。膀胱重量も差を認めなかった。腰部脊髄において上位中枢からの下行神経線維であるセロトニン神経、求心性神経線維であるCGRP神経を観察したが、3群間で有意な差を認めなかった。【考察】過去の報告では、AMPA受容体拮抗薬や骨髄細胞を用いることにより損傷を受けた神経が保護・再生されることにより機能回復が促進されると報告されているが、残念ながら今回の検討では有意な機能回復や神経再生は認められなかった。手技の問題、培養細胞の状態、使用したラットの状態などいくつかの要因が関与していることが予想される。今後の更なる検討が必要であると考えている。【結論】脊髄損傷においてAMPA受容体拮抗薬や骨髄細胞を投与したが有意な機能回復や神経再生は認められなかった。研究方法を再考し、今後の更なる検討が必要である。
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