糖尿病患者の血糖値測定のため、酵素やフェニルボロン酸誘導体をグルコースの認識部位として用いたグルコースセンサーが多数開発されているが、これらの材料はグルコースに対する特異性や安定性の面で問題があり実用的でない。そこで、本研究では色素修飾コンカナバリンA(Con A)とグリコーゲン(Gly)が形成する凝集体を用いることでこれらの問題点を解決したグルコースの検出システムの開発を目的として研究を行った。 初めに、FITC-Con AとGlyの凝集体を利用した蛍光検出方法を検討し、Con Aにラベル化されたFITCが凝集体を形成すると消光されること、また、このFITC-Con A-Gly複合体はグルコースによって分解し、消光されていたFITCの蛍光はGluの濃度依存的に回復することを明らかにした。この現象は単一の蛍光色素(FITC)のみの蛍光変化にもとづいているため、常用されるFRETシステムに必要な2種の蛍光色素の使用を避けられる点で優れている。 次に、この複合体を内包するマイクロカプセルの調製を検討した。カプセルの芯物質にCaCO_3微粒子を用い、(PEI/PSS)_4累積膜を被覆することでFITC-Con Aの活性を維持したままカプセル化することができ、グルコースの応答性も均一系の場合と同程度であった。この方法はCon A以外の生体試料を用いた場合でも応用可能であり今後の機能性カプセルの開発に有用であると考えられる。しかし、(PEI/PSS)_4カプセル膜ではFITC-Con Aが漏れ出てしまいくり返しのグルコース検出が出来なかった。今後は、封入したFITC-Con Aを漏出させることなくグルコースの透過性が良いカプセル膜を検討することで完全にくり返して利用できるカプセルの調製を目指し、さらにマイクロカプセルの基板への固定化方法を検討する。
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