研究課題
本研究の目的は、インスリン分泌に及ぼす組織間の情報ネットワークの解明を目指すことである。肝臓への遺伝子導入を行ったマウスにおいて、遺伝子導入3日目に耐糖能の改善を認め、遺伝子導入16日目には膵インスリン含量の増加が認められた。さらにBrdU染色の結果からこの膵インスリン含量の増加は膵β細胞の増殖亢進によるものであることが示唆された。これらのことから、なんらかの機序を介した、肝臓から膵β細胞への臓器間連関機構が存在することが示唆され、その経路の同定を試みた。遺伝子導入を行った肝臓から単離したmRNAを用いて、microarrayによる遺伝子発現変化の網羅的解析を行った。その結果、膵β細胞機能、増殖に変化を及ぼすことが報告されている複数の分泌蛋白の発現が増加していることが明らかとなり、これらの遺伝子を組み込んだ組み換えアデノウィルスを作成した。現在、これらのアデノウィルスを用いて肝臓に遺伝子導入を行ったマウスにおいて、糖負荷試験による糖応答性インスリン分泌能の評価、膵組織のBrdU免疫染色による膵β細胞増殖における変化の検討などを行っている。肝臓と膵β細胞は全身の糖代謝においていずれも極めて重要な役割を有する。しかしこれら両臓器間における連関についてはこれまでほとんど報告されておらず、この連関経路を明らかにすることにより糖尿病の病態解明、あるいは新規治療に結びつくものであると考える。
すべて 2007
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