研究概要 |
口臭の主な原因は口腔細菌の代謝産物によるものが大部分であると考えられるが、中でも口腔Veillonellaが口臭発生部位である舌苔中の主な硫化水素産生菌の一つであることを報告してきた(Washio J et al.,2005)。 Veillonella属は口腔常在細菌の一つであり、システインやシステイン含有ペプチドなどからH_2Sを産生することで口臭の一因を担うと考えられる。また、Veillonella属は乳酸をエネルギー源として利用する。乳酸はStreptococcus属などが糖を代謝することで産生され、口腔内に多く存在すると考えられ、これらの乳酸をVeillonellaが利用していると考えられている。従って実際に、Veillonellaがシステインを代謝する環境中には、同時に乳酸が多く存在することが考えられる。そこで、環境中の乳酸がVeillonella属のH_2S産生能に影響を及ぼすのか検討を行った。 Veillonella属によるH_2S産生量は酸性より中性付近の方が多くなったが、乳酸ナトリウム存在下ではH_2S産生量がさらに4.5〜23.7倍に増加した。また、粗酵素抽出液にシステインを加えるとH_2Sを産生し、その産生量はpH5よりもpH7の方が多かったが、乳酸ナトリウムはH_2S産生に影響しなかった。これらより、実際の口腔では、舌苔中のpHだけではなく乳酸濃度が、口臭レベルに影響する可能性が考えられた。この時、乳酸はVeillonella菌体内の酵素活性を直接活性化するのではなく、Veillonellaのシステイン取り込み系を促進する可能性が示唆された。
|