肝臓星細胞は肝類洞周囲腔に存在するビタミンA貯蔵細胞であり、肝線維化においても重要な役割を担っていることが知られている。この際、星細胞はビタミンA脂質滴を失いながら活性化し、筋線維芽細胞様に分化することが知られている。しかしながら、ビタミンAが肝線維化を抑制するという報告がある一方、肝線維化を促進するという報告もあり、肝線維化にビタミンAがどのように関与しているのか不明である。またビタミンAの活性型代謝産物であるレチノイン酸は、レチノイン酸受容体(RAR)α、β、γに結合して標的遺伝子の転写制御を行うことが知られている。そこで我々は、ラット肝臓星細胞の初代培養系を用い、活性化しつつある星細胞においてRARsがどのような発現パターンを示すのかを詳細に解析した。その結果、RARsのmRNAの発現は、星細胞の活性化に伴って減少することが明らかとなった。一方、RARαの蛋白質の発現は、星細胞の活性化に伴って増加することがウェスタンブロッティングの結果より明らかとなった。これらの結果は、活性化星細胞におけるRARα遺伝子の発現には何らかの転写後調節機構が存在することを示唆している。さらに、レチノイン酸応答配列を用いたレポーターアッセイにより、星細胞におけるRARsの機能を解析したところ、星細胞は活性化した後にのみ、レチノイン酸に応答することが明らかとなった。またRARα蛋白質の局在を免疫組織化学によって解析したところ、活性化した星細胞において細胞質にドット状に存在するものがあることが明らかとなった。
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