研究概要 |
【はじめに】びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)は現在においても予後不良な疾患であり、分子生物学的にheterogeneousな疾患群と考えられている。今回我々はDLBCLのパラフィンブロックからtissue microarray(TMA)法によりarray slideを作成し、種々の抗体を用いた免疫染色を行い、生物学的予後因子の解析を行った。【症例と方法】2000年から2006年まで当院で治療を行い、初発時生検組織を得たDLBCL65例。年齢は15才から88才で平均59.7才、CHOP群が32例でR-CHOP群33例。5年生存率はCHOP群37% vs R-CHOP群68%(P=0.07)だった。TMA法によりCD10,BCL6,MUM1の免疫染色を施行した。【結果】Hans(Blood 2004)の報告に従い、免疫染色の結果からGC type(N=31),non-GC type(N=34)に分類することができた。5年生存率はGC群60% vs non-GC群41%(P=0.15)で、年齢別に検討した結果、高齢者、若年者に関わらずGC群が生存率がよい傾向にあり、60歳以下IPI L+LI群に限ると5年生存率はGC群100% vs non-GC群52%(P=0.04)であった。またMUM1陽性群の5年生存率は28%であり(MUM1+28% vs MUM1-68%(P=0.001)年齢やIPIに関わらず、予後不良因子だった。特に、60歳以下のIPI L+LI群は通常予後良好と考えられているが、そのうちのMUM1陽性群は5年生存率33%と予後不良であり(MUM1+33% vs MUM1-81% P=0.003)、MUM1による層別化は予後判定に有用と考えられた。BCL6の免疫染色の結果、陽性例はIPI scoreが低く予後良好な傾向にあった。また、BCL6陽性例はrituximab導入後の生存率改善がなく(CHOP群56% vs R-CHOP群64%)、rituximabの感受性が低い可能性が示唆された。一方、BCL6陰性例はrituximab導入後に生存率の改善が認められた(CHOP群32% vs R-CHOP群80%)【まとめ】免疫染色を用い分子生物学的側面からDLBCLを検討した。GC群、non-GC群の分類や、MUM1とBCL6は生物学的因子、予後因子として臨床的にも有用であると考えられた。
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