本年度では日本人および白人種の肝臓試料を用いてOATPIBI mRNA発現量における個人差を明らかにすること、また性差、加齢、さらにSLOCO1B1遺伝子5'上流領域に存在するSingle Nucleotide Polymorphism (SNP)(-11187G>A)のOATPIBI mRNA発現量に対する影響を明らかにすることを目的とした。 白人種肝25検体(男性19名、女性6名)、日本人種肝31検体(男性21名、女性7名)より作製したcDNAを用いてOATPIBI mRNA発現量を測定したところ、白人種肝検体では著しくOATPIBI mRNA発現量の低い検体が2検体存在しており、31.4倍の発現量の個人差を生じていた。その他の23検体間においては約5.5倍の差が認められた。日本人種肝検体のOATPIBI mRNA発現量には約4.9倍の差が認められた。次にOATPIBI mRNA発現量の個人差を生じる因子を明らかとするため、OATPIBI mRNA発現量と加齢、性別、またはSNP (-11187G>A)との関連を解析した。しかしながら、いずれの因子に関してもOATPIBI mRNA発現量の個人差との関連は認められなかった。次に肝機能の指標となるAST (aspartate aminotransfbrase)、ALT (alanine-2-oxoglutarate aminotransfbrase)とOATPIBI mRNA発現量との比較をした。その結果、著しく発現量の低下していた白人種2検体においてAST値およびALT値は大きく上昇していることが明らかとなった。 以上の結果より、日本人および白人種に認められるOATPIBI mRNAの個人差は5〜6倍であり、さらに炎症などによる肝障害時にはOATPIBI mRNA発現量は大きく減少すると考えられた。
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