研究概要 |
膀胱癌は80%の表在癌と20%の浸潤癌に大別されるがその治療法および予後は大きく異なる。また表在癌のうち10-20%は再発時浸潤癌へ移行するためどの時点で膀胱全摘除術を考慮するかが治療上重要な問題となる。 MMPはZnイオンを活性部位にもつプロテアーゼであり、基底膜や様々な細胞外マトリックス(ECM)を分解する能力を持つ。コラーゲン,ゼラチンなどの細胞外基質(ECM)分解は癌細胞が浸潤,転移する際に必須のステップであり、MMP-2およびMMP-9はその過程に重要な役割を果たすと考えられている。 従来MMPの検出にはザイモグラフィーなどの手法が用いられてきたが、近年film in situ zymography (FIZ)といわれる手法が開発され、in situでのゼラチナーゼ活性の局在、強さを評価することが可能となった。 膀胱癌25例の切除標本につき評価したところ4段階に分類したFIZ活性の強さと、深達度、核異型度、微小血管浸潤、術後転移の有無との間で相関を認めるようであった。またFIZ活性と予後に関しても有意な相関が示された。 膀胱癌の治療方針を決定する際に特に問題となるのがG3、pT1症例に対して膀胱全摘除術を施行するタイミングである。FIZは手技的に比較的簡便であり、従来の病理学的パラメーターに加え、治療の個別化を考慮するにあたり、有用となりうる可能性があり、今後G3,pT1症例に限定した検討を行っていく予定である。
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