本研究は、線虫を用いて、インスリン経路やLKB1-AMPK経路に関わる遺伝子の変異体の表現型を指標として順遺伝学的スクリーニングを行い、それらの経路の新規遺伝子を単離し、哺乳動物実験系を用いて機能解析をするという研究方針で展開している。以下に交付申請書の「研究実施計画」と対応させて、本研究の進捗状況や、得られた新たな知見を記す。 1 アミノ酸や炭素源を検知し、発生を始動するシグナル伝達に関与する遺伝子の順遺伝学を用いた同定。インスリン・IGF経路を負に抑制するPTEN(線虫ではDAF-18)やFoxo(線虫ではDAF-18)、またLKB1-AMPK経路の変異体の線虫の表現型を指標とし、変異誘発剤であるEMSを使ってスクリーニングを行い、現在のところ一変異体を単離した。また、EMSなどの化学的な変異誘発処理の代わりに、トランスポゾンを用いたスクリーニングも現在準備中である。 2 哺乳培養細胞系やin vitro実験系で示唆されている、インスリン経路やLKB1-AMPK経路の上流や下流因子がin vivoにおいて線虫の栄養認識に関与する可能性の検討。哺乳動物実験系によりAMPKの上流因子として提唱されているATMキナーゼの線虫ホモログの変異体atl-1とatm-1がAMPKホモログaak-1とaak-2の二重変異体と同様の表現型を示すか検討したが、atl-1とatm-1の両者において表現型は認められなかった。また、上記の実施計画1と2に加えて、線虫のAMPKとPTENが飢餓時の生存維持に必須であることを見いだした。またその表現型を利用して抑圧変異体スクリーニングを行ったところ、複数の変異体が同定された。現在これらの変異体の責任遺伝子のマッピングを行っており、その遺伝子の同定と哺乳動物実験系での機能解析を今年度に目指している。
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