ヒト血管内皮、平滑筋細胞を用いた血管壁細胞老化における長寿遺伝子Sirt1の役割に関して、Sirt1過剰発現が、酸化ストレス誘導性血管壁細胞老化を抑制することを確認した。また、逆にSirt1阻害が老化形質を促進することを確認した。その分子機序としてp53アセチル化が重要であること、また結果として血管細胞老化形質が血管内皮機能障害(eNOSの発現減少、PAI-1の発現増加)を引き起こすことを示した(2006年日本老年医学会、日本動脈硬化学会、日本循環器学会にて発表、現在論文投稿中)。培養血管内皮細胞を用いた血管内皮保護作用のある薬剤とSirt1の関連性の検討について、PDE3阻害薬シロスタゾール、PDE4阻害薬ラロプリム、PDE5阻害薬バルデナフィル、ポリフェノール類であるレズベラトロールに関して検討を行い、酸化ストレスにより誘導される血管老化形質に対する抑制効果を確認、またその分子生物学的機序として、eNOSの活性化に伴うNO産生増加がSirt1の発現亢進を誘導し、その抑制効果に大きな役割を果たしていることを確認した(2007年日本循環器学会にて発表)。動物血管障害モデルの検討に関しては、パラコート投与マウスにより血管老化を促進させる系を用い、上記細胞レベルで効果が確認されたシロスタゾールを投与することにより、eNOS、Sirt1の発現が亢進、血管保護作用に大きな役割を果たしていることが確認された(現在投稿準備中)。
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