白血病標的遺伝子Evi1は難治性白血病との関連が知られており、その生理作用の解明は白血病克服のための重要な課題である。これまでに我々は、Evi1のexon4を欠損させたノックアウトマウス、及びexon4をloxP配列で挟んだコンディショナルノックアウトマウスを作製し、Evi1が個体での造血幹細胞の維持・増殖に重要であることを明らかにしてきた。今年度は、Evi1による個体造血制御についてさらに解析を進め、(1)Evi1を欠損した骨髄細胞はその造血再構築能を失うこと、(2)Evi1(+/-)マウスは正常に発育し、末梢血や骨髄像では明らかな異常を示さないが、造血幹細胞の数や造血再構築能は野生型と比べて低下していること、(3)Evi1(+/-)マウスやEvi1欠損を誘導したマウスでは、5FU投与後の造血幹細胞及び血小板数の回復が遅延すること、を明らかにした。また、白血病キメラ遺伝子MLL/ENL及びE2A/HLFをEvi1コンディショナルノックアウトマウスから採取した骨髄に導入し、半固形培地上で形質転換後にCreウイルスを導入してEvi-1の欠損を誘導すると、その増殖能が低下することを見出した。以上の解析結果より、Evi1は造血幹細胞の増殖能、造血再構築能を量依存的に制御すること、血小板の産生にも関与していることが判明した。さらに、Evi1が白血病細胞の増殖にも重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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