平成18年度は大別して3つの実験計画を立案し遂行してきた。 1)活性化型ASK1複合体構成因子の同定 ASK1は定常状態で巨大なシグナル伝達複合体を形成しているが、活性酸素種の存在でさらに高分子量化することが明らかとなっていることから、その構成因子の同定を試みた。その結果、活性酸素種依存的にASK1複合体に結合してくる3つの因子が同定された。そのうちのひとつについてクローニングをし、生化学的手法を用いてその役割について検討している。 2)TRAF2およびTRAF6のASK1結合領域の決定 ASK1抑制因子であるチオレドキシン、活性化因子であるTRAF2およびTRAF6はともにASK1のN末端領域に結合することから、両者がASK1の結合領域を競合することでASK1の活性化制御がなされていると予想されていた。しかしながら、両者のASK1結合領域を詳細に検討したところ、両者の結合領域はASK1のN末端領域の異なる部位を必要とすることがわかった。さらに、両者の結合領域の間に存在するコイルドコイル領域がASK1の活性化に重要であることも明らかとなり、現在これらの因子の結合とこの領域の関係を検討している。 3)ASK1のユビキチン化・脱ユビキチン化による活性化制御機構の解明 現在までにASK1が活性酸素種依存的にユビキチン化されるという知見を得ていることから、質量分析計を用いてそのアミノ酸残基の決定を考えている。現在、その実験に必要な変異体作成が終了したところである。一方で、ASK1複合体の構成因子である脱ユビキチン酵素がASK1を基質とすることがin vitroにおいて確認された。以上のことから、ASK1のユビキチン化および脱ユビキチン化の詳細な機構について検討し、新たなASK1活性化制御機構を解明していく。
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