今年度の研究補助金を利用して、慢性動物(ネコ)実験の設備備品を購入して、実験を始めた。慢性記録用のネコを二匹作って、覚醒状態で大脳第一次聴覚野の単一神経活動を記録した。今までに、二百個以上の単一神経細胞のデータを集めた。これらのデータを解析して、下記のことを発見した。 1)主な第一次聴覚野細胞は、純音刺激の開始だけではなくて、刺激の終了に対しても反応する。特に、純音刺激に対して、瞬間性開始反応を表す細胞群には刺激の終了反応がある。 2)純音刺激においての終了反応は、開始反応に比べて、潜時がほぼ同じ、強さが低くて、持続時間が長かった。 3)終了反応の強さは刺激音圧の増強により、単純に増えていく。 4)終了反応と開始反応の周波数応答野は同一ではなくて、一部重なっていて、一部外れていることが明らかになった。終了応答野と開始応答野の相対関係は細胞ごとによって違っていた。しかも、各細胞の応答野関係は刺激音圧により、あまり変わらなかった。 5)終了反応が存在する細胞において、刺激持続時のスパイク発火活動の抑制が存在することが見つかった。前抑制があれば、終了反応の強さがより強くなった。しかし、前抑制がなくて、刺激終了に反応した細胞も多く見つかった。 以上の結果は、第一次聴覚野の細胞は音の開始以外に、音の終了にも、情報処理していることが強く示唆された。ここまでの結果をまとめて、"Comparison between offset and onset responses of primary auditory cortex on-off neurons in awake cats"という論文を書いた。"Journal of Neurophysiology"に採用された。
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