研究概要 |
われわれはショウジョウバエの神経発達関連遺伝子データベースをもとに分子生物学的手法によって自閉症の原因候補遺伝子を絞り込んでいる。RNAi法によるゲノムワイドスクリーニングでショウジョウバエ胚の神経回路形成に関与する遺伝子群の抽出をすすめ、現在までに全13,600個の遺伝子のうち約6000個のスクリーニングを終え、約200個の神経発達関連遺伝子を得た。 続いてその遺伝子情報から相同性検索(National Center for Biotechnology Information;NCBI、米国)により、当該遺伝子のヒトホモログの遺伝子配列、アミノ酸配列、染色体部位等の基本的情報を収得した。その結果から、自閉症の連鎖解析上有望な染色体部位近傍に位置する遺伝子、自閉症の病態形成の鍵となるセロトニン神経系の発生と維持に関連する遺伝子を自閉症感受性候補遺伝子として絞り込み、これまでに20個の有望な遺伝子を抽出した。 これらの自閉症感受性候補遺伝子の疾患特異性を検証するためには、自閉症者の死後脳で当該遺伝子の発現を確認するという作業が欠かせない。そこでわれわれはAutism Tissue Program(プリンストン、米国)との交渉を行ない、審査の結果本邦で初めて自閉症死後脳サンプルの供与を受けられることが決定した。現在サンプル輸送などの諸手続きが進行中である。 平行して、上記スクリーニングで抽出された自閉症感受性候補遺伝子の中で特に有望な感受性候補遺伝子(ROBO、LMX1Bなど3種)に対し、臨床遺伝研究に最適な自閉症者DNAトリオサンプル(コーカサス人家系血液サンプル256トリオ、Autism Genetic Resource Exchange、AGRE(ロサンゼルス、米国)から供与)を用いて伝達不均衡テスト(TDT)による関連解析を行った。その結果、これらの遺伝子に疾患のリスクと関連する遺伝子多型が発見された。現在論文投稿準備中である。
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