食事場面での母子のやりとりは、食物などを介した母子相互交渉である。また離乳期にあたる乳児期後期は、社会性が発達する時期であり、この時期の母親は子どもの社会的行動発達の重要な役割を担っているとされている。そして離乳期における食事場面は、介助する者と介助される者の両者の要求が対立しやすくかかわりが難しい場面ともされている。そのため本研究では、食事場面において、子どものどのような行動に対し母親が介入し、また子どもの注意や行動がそれによりどのように変化するのかを検討した。方法は、子どもが9-11カ月および14カ月の各月齢時に2回毎、家庭訪問し、食事場面をビデオカメラで撮影した。子どもが食物を口に入れた瞬間から終了するまでの行動を分析対象とし、子どもの食行動としては、食物、食器・食具等を「持つ」、「口まで運ぶ」、「見る」等を記録した。母親の行動は、子どもの注意への「応答」と、子どもの注意を別の対象に向けさせる「転換」に分類し、他に子どもへ食事介助する行動等も記録した。その結果、母親は、子どもの行動を観察しながら、「応答」、「転換」を使い分け、子どもの食への関心を引きだしていた。先行研究において、母親の「転換」による介入は子どもに対する「過度のコントロール」であり、母親が遊び場面で用いた「転換」は、有効な方略ではないとされていたが、食事場面において母親が「転換」を用いることは、子どもの注意が食に向いていない時でも、食行動に変化を与え、食事が進行する効果が示唆された。 現在は、3歳時点における質問紙による追跡調査を実施中である。これは、3歳時点での生活状況と、食行動について、母親からの自記式質問紙を用いて把握するものである。乳幼児期の食行動は3歳時点でほぼ確立するといわれていることから、3歳時点の食行動と、離乳期のデータとを比較することで今後の研究の枠組み構成の一助とする為である。
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