研究課題
平成19年度は研究対象としている神経型電位依存性Ca^<2+>チャネルの中枢神経変性疾患モデル(in vitroおよびin vivo)における解析に重点を置き、その病態形成における役割について検討した結果、以下の新結果を得た。1.昨年度の研究において、ヒスタミンやブラジキニンといったGPCRアゴニストが低pH条件下において神経細胞死を誘発すること、またその過程でTRPV1およびL型電位依存性Ca^<2+>チャネルの活性化が重要な役割を果たすことを新規に見出したことから、in vivo一過性脳虚血モデルを構築し、実験を行った。その結果、TRPV1阻害薬であるcapsazepineの適用により、神経学的症状および虚血負荷により惹起される梗塞巣が顕著に抑制された。さらにTRPV1+/-マウスおよびTRPV1-/-マウスにおいても梗塞巣の形成が有意に抑制された。以上の結果より、TRPV1およびその下流に派生するCa^<2+>シグナリングは脳虚血傷害の発生において重要な役割を果たしていることが示された。2.細胞内Ca^<2+>の恒常性の破綻に起因する中枢神経変性疾患として、てんかん症候群およびそれに付随する運動失調症が挙げられることから、本年はP/Q型電位依存性Ca^<2+>チャネルをコードする遺伝子であるcacnalaにm251Kミスセンス変異を有し、てんかんおよび運動失調を示す初の変異ラットであるgroggyラットから調製した小脳プルキンエ細胞を用いて、P/Q型電位依存性Ca^<2+>チャネル電流を測定した。最大応答を示した膜電位における電流密度を比較したところ、groggyラットにおいて電流密度の有意な増加が認められた。また、groggyラットの活性化曲線は正常ラットのそれと比較して、脱分極方向ヘシフトしており、groggyラットの不活性化曲線は脱分極方向ヘシフトしていた。低閾値活性化型電位依存性Ca^<2+>チャネル電流の各種パラメータにおいては有意な変化は観察されなかった。本研究で得られた知見は、これら小脳プルキンエ細胞の機能変化に起因する難治性神経疾患に対する新たな洞察を提供するものであると考えられる。
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Journal of Neuroscience Research (in press)
Neuroscience Letters 246
ページ: 75-80