研究概要 |
医農薬をはじめとする生理活性物質の大部分は有機化合物であり,その中でもヘテロ原子を有し複数の環が縮環した骨格を有する化合物群は医農薬のシーズとして魅力あるものであるが,その複雑な構造故に十分に検討が行われてきたとは言えない.これらの環状化合物の医薬品への展開を考えた場合に最も重要であることは,従来のように構成要素を段階的に連結して行く合成法ではなく,複数の成分を一気に縮合させるワンポット合成法,さらにはその過程で生じた反応中間体活性種を分子内で捕捉して複数の環を一気に構築するドミノ型骨格合成法の開発である.本研究では21世紀の有機合成化学を意識した医農薬の開発研究に強力なツールを提供することを目的として,平成18年度は,アルデヒド類と末端アセチレン類,イソシアネート類から2-オキサゾリジノンのワンポット合成を検討した.その結果,3成分をトルエン中,亜鉛トリフラートとアミン類,1,2-アミノアルコール類と混合することにより,室温の穏やかな条件下,3成分縮合反応が進行し,目的とする2-オキサゾリジノン誘導体がワンポットで得られることを見い出した.本反応は複素環のすべての位置に置換基を導入することができ,ワンポットで多様な置換基を有する誘導体を合成できることから,医農薬の開発研究において極めて有用なツールとなり得ると考えられる.今後は,反応溶媒や使用する塩基などの反応条件の最適化を進めると共に,種々のアルデヒド類や末端アセチレン類,イソシアナート類を用いて検討を行い,本反応の適用範囲を詳細に調査する予定である.
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