研究概要 |
二重鎖DNA中の8-ヒドロキシグアニン(8-OH-G)を三本のHoogsteen型水素結合により認識する人工核酸として、核酸塩基部の環構造が異なる3種の架橋型人工核酸を設計した。架橋型人工核酸の有機合成はまず、設計した人工核酸のすべての共通中間体として4-アルキルリボース誘導体を設定・合成した。さらに、多様な人工核酸合成に展開可能な経路を確立することを目指し、N-グリコシド型人工核酸の共通中間体として2,4-位間に架橋構造を持つリボース誘導体を、C-グリコシド型人工核酸の共通中間体として1-アセチル-4-アルキルリボシドを設定し、それぞれを20グラム程度合成した。 1つ目の人工核酸として、プリン誘導体を塩基部に持つ架橋型人口核酸保護体を、N-グリコシド型人工核酸の共通中間体より8工程(22%)を経て合成することに成功した。また、C-グリコシド型人工核酸としてジ置換ピリジンを塩基部にもつ架橋型人口核酸を、中間体より3工程(6%)で合成することに成功した。合成した化合物のグリコシド結合は天然の核酸構造と同じβ-結合を有していることを明らかにした。これまでのところ、C-グリコシド型人工核酸合成の鍵反応であるトリアニオン化(リチオ化)核酸塩基とアルドース誘導体との縮合反応は20%程度の収率にとどまっており、生物学的実験を系統的に行うために十分な量のオリゴヌクレオチドを得るためには本反応の収率改善が必要であると考えられる。しかし、予備的実験からトランスメタル化を経ることで収率向上を期待できる結果が得られており、本問題点は解決できるものと考えている。また、8-OH-Gの認識における水素結合の重要性を議論するため、水素供与官能基を持たないピリジン型人工核酸を新たに設計し、その合成は目的骨格の構築まで達成した。現在はそのアミダイト体への変換と立体化学の詳細を検討している。 8-OH-Gを持つオリゴヌクレオチドは市販のアミダイトブロックを用いて合成した。現在、それに相補的なオリゴヌクレオチドへの人工核酸の導入を検討している。
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