CSBノックアウトマウス(Csb-KO)のヘテロ遺伝子型マウスと、ヒトCSBキメラタンパク質トランスジェニックマウスとの交配により、最終的にヒトCSBキメラタンパク質を発現し、且つ、CSB遺伝子型が完全にノックアウトとなったマウスを得た。このマウスはヒトCS-B患者の遺伝子型となるので、このマウスがどのような表現型を示すかを観察した。ヒトCS-B患者では、著しい成長阻害、神経細胞の脱ミエリン化、小脳の萎縮などの症状が見られるが、作製したマウスでは著しい成長阻害などの顕著な変化は見られなかった。解剖学的な点から、今後より詳細に解析を行う必要がある。一方、マウスCSBタンパク質とヒトCSBタンパク質ではタンパク質N末端の相同性が低いために、導入したヒトCSBキメラタンパク質がマウス細胞内ではヒト細胞とは異なる挙動を示し、そのために著しい成長阻害等が見られない可能性があるので、マウスCSBタンパク質N末端を保持する変異型マウスCSBタンパク質発現トランスジェニックマウスの作製を開始した。 チミングリコールを1つだけ持つレポーターコンストラクトを用いて、各細胞間のチミングリコール修復活性を測定した結果、正常、UVsSおよびCS-B患者細胞間での有意な差は見られなかった。このことから、CS-B患者における早老症の主たる原因が酸化的DNA損傷修復異常によるものではないと考えた。 UVsS細胞核抽出液を用いたRNA polymerase II in vitro転写活性を測定した結果、精製したヒトCSBタンパク質を加えた場合では転写促進活性が見られ、キメラタンパク質を加えた場合では転写抑制活性が見られた。今後更に詳細な解析を必要とするが、転写異常がCS-B患者における早老症の主たる原因として指摘できると考えた。
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