局所麻酔薬はナトリウムチャネルだけでなく様々なチャネルや受容体に作用して薬理効果を発揮する。局所麻酔薬は皮内注射によって疼痛を発生させるがその機序としてナトリウムチャネルでなく疼痛や悪心嘔吐に関連する5-HT3受容体との関連が示唆されているが、局所麻酔薬の5-HT3受容体に対する作用を系統立てて調べた研究はない。今回アフリカツメガエルの卵母細胞に5-HT3受容体のRNAを注入して受容体を発現させ2電極電位固定法で局所麻酔薬の作用を測定した。また作用部位を同定するために点変異受容体を作成しそれらに対する作用を測定した。 局所麻酔薬はすべて、濃度依存性に5-HT3受容体を抑制した。抑制濃度はプロカインテトラカインリドカインブピバカインの順番に高濃度になりエステル系局所麻酔薬はアミド系局所麻酔薬よりも抑制濃度が低濃度であった。プロカインとテトラカインは競合的に5-HT3受容体を抑制したがリドカインとブピバカインは競合的かつ非競合的に抑制した。5-HT3受容体のアゴニスト結合部位と思われるアミノ酸残基点変異受容体(W62Y E101D E101N W155Y)を作成した。プロカインは点変異受容体により抑制濃度が10倍以上に変化したが、他の薬剤はW62Y受容体に対するテトラカインをのぞいて(6倍)抑制濃度は2-3倍に変化したのみであった。プロカインは今回の点変異を行ったアミノ酸残基の近傍で作用していると考えられる。
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