我々は、今回の研究により、三叉神経運動ニューロンが、単一神経細胞内において神経可塑性を持ち、その興奮性を変化させる機能も持つことを明確にした。 実験は、生後2-4日目のSD系ラットを用い、ハロセン吸入麻酔下にて麻酔後、脳幹を摘出し、脳幹スライスを作成した後、三叉神経運動核中の三叉神経運動ニューロンを顕微鏡下にて同定し、同神経細胞より、神経活動を記録した。APV、CNQX、Bicuculline、strychnineといった興奮性および抑制性神経伝達物質の拮抗薬をチャンバー内投与し、神経伝達を抑制した状態で、パッチクランプ法にて直接、神経細胞にInductionを与えた。その結果、Inductionの効果により、三叉神経運動ニューロンは、発火頻度を増やし、その興奮性を増強させた。この結果を電流固定法(current-clamp)の実験で得られたIV(電流-電圧)グラフにて解析すると、活動性は左にシフト(Frequency-current curveにて)することが観察され、興奮性の増強を確認できた。また、この可塑性は長期継続し、LTP(Long Term Potentiation)を持つことが確認された。 これは、神経間を通した三叉神経感覚系からの刺激により、三叉神経運動ニューロンの活動性が高まり、顎運動の生理学的活動性が高まっていることを示唆させるものである。 我々は、本研究結果を本年の国際神経科学会にて発表する予定であり、さらに神経外記録法による追加実験にて筋肉への直接のシグナルを記録し、解析する予定である。
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