今年度は、これまでの検討に加えて、マウスRANKL遺伝子5'上流基本転写領域の主要エレメントの解析として、3箇所のRunx2結合類似配列に変異を導入し、その変異の組合せのうち、5'上流から2番目のみに変異を導入したもの、および2番目と3番目に変異を導入したベクターを作成し、Iuciferase assayにてプロモータ活性を検討した。マウス骨髄間質細胞ST2では、変異導入箇所の増加に伴って、PKAアゴニスト投与によるプロモータ活性の増加が減弱していき、Runx2欠損マウス頭蓋冠由来細胞株であるC6では、変異箇所の多寡によらずプロモータ活性の変化は見られなかったことから、RANKL遺伝子基本転写調節領域に対してRunx2は発現を正に制御することが推定された。よって、外来性に導入したRANKLプロモータに対するRunx2の反応と、培養細胞ゲノム内のRANKL発現に対するRunx2の機能に開離が確認された。これに対しては、次年度にクロマチン免疫沈降法を用いて、Runx2によるRANKL遺伝子5'上流領域のクロマチンリモデリング機構の解析を予定している。一方、PKAアゴニスト投与によってRunx2発現がmRNAのレベルで約40%程度低下する現象が観察され、この機構の解析を検討予定であるが、海外の研究グループからは、副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)によるRunx2発現抑制に関する報告があり、PTHrPはPKA経路を介してRunx2発現をmRNAおよび蛋白のレベルで抑制すると報告されている。また、現在、KAアゴニスト投与によるRANKL発現充進機序は、Runx2発現抑制が関与すると考えられるが、Runx2がヒストン脱アセチル化酵素3(HDAC3)をrecruitし、クロマチンを凝集させる機構がより重要と思われる。なお、本研究成果の一端を内外の学会において発表した。
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