1.レチノイドによる肝細胞におけるネオジェニン遺伝子の発現量の解析 all-trans retinoic acid (ATAR)処理したヒト肝細胞癌由来細胞株HuH-7におけるネオジェニン(NEO)遺伝子の発現量を定量したところ、ATRAによるNEOの発現誘導は観察されなかった。 またレチノイド欠乏食または過剰食を与えたマウスの肝臓におけるNEO遺伝子の発現量を調べたところ、HuH-7と同様に変化は観察されなかった。このとき、NEOのリガンドとして報告されているヘモジュペリン(HJV)遺伝子の発現は、レチノイド過剰食群において、通常食・レチノイド欠乏食群よりも有意に減少していた。さらにそれぞれの食餌群に鉄を過剰投与したところ、鉄負荷によってそれぞれの群でNEOの発現低下が観察されたが、食餌群間での有意な発現量の差は認められなかった。 今後より詳細な検討を行うため、HJVおよびNEO遺伝子それぞれを発現ベクターにクローニングした。 2.レチノイドによるHuH-7細胞への鉄取込の解析 ATRA処理したHuH-7細胞における、ホロトランスフェリンおよびトラスフェリン非結合鉄を介した鉄取込について検討を行った。ホロトランスフェリンの取込は、[^<59>Fe]標識したトランスフェリンを用い、24時間後における細胞内比放射能を測定した。また、トランスフェリン非結合鉄においては、4日間、細胞をFe-NTA処理し、細胞内における非ヘム鉄を定量した。その結果、ホロトランスフェリン、トランスフェリン非結合鉄ともにATRA処理によって、HuH-7による鉄取込量が有意に減少した。 また、現在臨床試験において肝細胞癌の再発を有意に抑制することが示されているAcyclic retinoid (AcR)についても同様の検討を行ったところ、ATRAと同様、用量依存的にHuH-7による鉄の取込を抑制することが明かとなった。
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