研究概要 |
・方法: ・SDラットを用いて摘出した肺を3時間または18時間の冷保存後にそれぞれ肺移植を行い移植肺機能と本研究での標的とした転写因子やサイトカインなどの遺伝子発現の変化について検証した. ・結果: ・血液酸素分圧:移植後60分,240分後に有意差を認め,虚血再灌流障害により移植肺機能に大きな差を認めた. ・EGR-1 mRNAの発現量は1時間まで上昇し,特に長時間虚血後の障害肺に著明であった(p<0.05).その後4時間では2群共に低下し虚血時間による差違は認めなかった. ・EGR-1のmRNAの低下にもかかわらず発現が上昇する標的遺伝子があり,その経時的変化はEGR-1と異なるパターンを示した. ・考察: ・EGR-1は移植後早期に上昇し,4時間後までには低下していることから,再灌流後早期にIRIの程度を決定することが考えられる. ・EGR-1標的遺伝子群発現レベルの経時的変化はEGR-1とは異なる傾向を示し,様々な環境の変化による影響が考えられる. ・肺移植後虚血再灌流におけるActivating Transcription Factor群の遺伝子発現 ・他の刺激や臓器での反応と異なり移植肺ではATF1, ATF2, ATF4は有意な変化は認めず肺移植後の虚血再還流障害における役割は少ないと考えられた. ・移植肺内においてATF3は再還流後早期より上昇し,特に長時間保存後の移植肺では著明であった. ・これらの転写因子Egrl, ATF3は移植肺に対する虚血再還流によるストレス反応とその後の障害に強く関与すると思われた. ・炎症カスケードに関与する様々なmediatorをTargetとすることによってI/Rを軽減する試みは,肺移植後の短期的,長期的な予後の改善の新しい手段として,機能評価のバイオマーカーとして期待される. ・今後の検討課題 ・MAPKs pathwayの検証が必要. ・EGR-1は心臓移植においては血管障害に関与するとされており,肺移植においてもmRNAの発現は血管平滑筋と単核球に認められると報告されている. EGR-1を発現している単核球はdonor, recipientいずれの由来かは同定されていない,KOマウスを用いてその機能の検証が必要.
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