研究概要 |
TNF-αは歯周病の病態に深く関わるサイトカインである。このことは,炎症局所において,歯周病原性細菌由来のLPS刺激によって誘導されたTNF-αが,主に免疫細胞に作用して様々な炎症性サイトカインの産生を誘導することで説明される。最近,本研究代表者の所属する研究機関では,ヒト単球細胞株THP-1において,新規のヒトTNF-α遺伝子の転写制御因子LITAF(LPS-induced TNF-α factor)を発見した。また,現在までに,LITAFの発現制御に関して,その遺伝子発現を制御し得るプロモーター領域を解析し,AP-1およびNF-IL6を介する刺激伝達系が,その転写を制御する可能性を報告した(Shiomi et al.,FEMS Immunol Med Microbiol,2006)。 以上の研究成果を踏まえ,本研究では,AP-1やNF-IL6の転写活性を制御し得るMAPK系に着目し,THP-1において,LPS刺激によるLITAFの発現にMAPK系がどのように関与するかを,阻害剤を用いた実験系によって検討した。以下に当該年度の研究結果を示す。 MAPKファミリーの一つであるERK(p42/p44 MAPK)の阻害剤であるPD98059で前処理したTHP-1を,E.coli由来LPSで刺激した後,LITAFの発現量をウエスタンブロット法によって調べた。その結果,LITAFの発現量は,PD98059で前処理した実験系において有意に抑制されることを確認した。 以上の結果は,THP-1におけるLPS誘導性のLITAFの発現は,MAPKファミリーのERK系によって制御される可能性を示唆する。来年度以降,引き続き,ERK系の下流に存在する転写因子を念頭に,LITAFのプロモーター領域における転写活性の解明を詳細に行う予定である。
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