研究概要 |
本年度は,以下の調査研究活動を行い,それに伴う以下のような知見を得た。 1.既存データの二次的分析:オストメイトの同病者支援の実態に関するアンケート調査の二次的分析を行った。医療者と協働して(医療者から依頼を受けて),先輩患者の立場から同病者への支援を行っているオストメイト群38名(以下,同病者支援群)と499名のアンケートの中から「性別」,「年齢」,「術後年数」の項目においてマッチングした一般のオストメイト群38名(以下,対照群),計72名を対象に,「基本的属性」,「身体的状況」,「サポート状況」,「同病者との関わり状況」,「精神的健康」の項目について2群間の比較を行い,同病者支援を行っている患者の特性を検討した結果,同病者支援群が対照群より有意に高かった項目は,「経済的なゆとり」,「医師との関係性」,「ストーマの管理状況」,「患者会活動頻度」,「ピア・サポート機能」,「存在価値」,「意欲」であった。一方,「抑うつ」の項目に関しては、同病者支援群が対照群に対して有意に低いことが明らかとなった。 2.同病者支援経験者への面接調査:同病者支援経験者5名に対し,「同病者を支援するにあたり学んできたこと」,「最低限備えておいたほうが良い資質」,「同病者支援の体験談」,「困難・問題と感じたこと」,「必要と思う技術」,「学びたいこと」,「医療者との協働する上で守るべきこと」などについて,一人1時間程度の面接を行い,医療者と協働して同病者支援を行っている患者側のデータを収集した。これらのデータに関しては,現在分析中である。また,次年度は,同病者を支援する患者と協働している医療者に対して面接調査を行う予定である。 3.同病者支援の場でのフィールドワークによるピア・サポート状況の把握 4.患者ボランティア,関連領域の研究者,実践家との勉強会 上記の3,4に関しては,月に一度開催される自主グループ活動への参加の中で,対応の難しかったケースや連携のできたケース(医療者が行うサービスへ繋げたケース,あるいは医療者から自主グループ活動へ繋げたケース)などについて,患者ボランティア,実践家と共に事例検討する機会を持ち,現場での対応に役立てている。この中で出された課題についても,本研究の知見として,分析・考察に組み込んでいく予定である。
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