これまでに不整脈治療の研究・開発分野は目覚しい発展を遂げてきたが、不整脈発生機序については未だ不明な点が多い。本研究では、細胞電気生理学的解析により単一心筋細胞内および隣接心筋細胞間における電気動態を明らかにし、異常興奮伝播機序を細胞レベルで理解することを目的とした。その基礎研究として、マイクロパターニング法によって心筋細胞を自在に配列する方法を確立し、配列した心筋細胞の形態学的、生理学的特徴付けを行った。紫外線硬化剤を塗布したガラス表面上に、精密設計されたフォトマスクを通して紫外線を照射することによりマイクロメートルオーダーのパターンを作製した。新生児ラットの単離心筋細胞またはヒト培養心筋細胞を作製したパターン上にて培養することにより、自在配列心筋細胞標本を得た。配列した細胞では細胞骨格系がパターンに準じた配行へと変化していた。また、細胞と細胞の境界面にはギャップ結合構成タンパク質であるコネキシンが局在していた。蛍光色素を用いたDye transfer assayや、電位感受性色素を用いたOptical mapping analysisにより、配列心筋細胞はギャップ結合を介して構造的にも機能的にも結合していることが確かめられた。これらのことから、この自在配列心筋細胞標本は細胞間コミュニケーションを解析するための良いモデルとなり得る可能性が示唆された。
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