これまでに不整脈治療の研究・開発分野は目覚しい発展を遂げてきたが、不整脈発生機序については未だ不明な点が多い。本研究では、細胞電気生理学的解析により単一心筋細胞内および隣接心筋細胞間における電気動態を明らかにし、異常興奮伝播機序を細胞レベルで理解することを目的とした。その基礎研究として、これまでに、紫外線硬化剤による表面加工技術を利用したマイクロパターニングの作成に成功しており、パターン上へ自在配列した新生児ラットの単離心筋細胞の形態学的、生理学的特徴付けを行った。また、単離心筋細胞以外にも培養心筋細胞や培養繊維芽細胞、さらにはヒト子宮頸癌由来培養細胞やヒト臍帯静脈内皮細胞など、細胞種を問わずに配列可能であること、そして複数種の細胞を共培養することが可能であることを確認した。心筋梗塞を起こした心臓では、生存している心筋細胞と増殖した繊維芽細胞との相互作用が重要視されており、ラット単離心筋細胞の初代培養系において、マイクロパターニング法により心筋細胞と繊維芽細胞とを自在配列した標本は、病的心臓における両細胞間のコミュニケーションや電気動態を解析するための良いモデルであると言える。
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