Porphyromonas gingivalis、 Tannerella forsythensis、Actinobacillus actinomycetemcomitansが重要な歯周病原細菌とされている中で、前年度にはA. actinomycetemcomitansがP.gingivalisやT.forsythensisと共存する場合に高い病原性を示して歯周炎の進行に関与する可能性を示唆した。そこで今年度はP.gingivalisの線毛タイプの異なる保存株および歯周炎患者より分離した複数の臨床分離株を用いて、P.gingivalisとA. actinomycetemcomitansのバイオフィルム形成能について検討した。線毛タイプI型であるATCC33277株はA. actinomycetemcomitansとバイオフィルムを形成するが、線毛タイプII型であるATCC53977株はバイオフィルムを形成しないことが示されたため、P.gingivalisの線毛タイプとバイオフィルム形成能の関連について調べたところ、線毛タイプ1型、Ib型、II型およびIV型についてはバイオフィルム形成能に対し関連性のないことが示唆された。 そこで強い付着能が認められたATCC33277株に対して、付着因子について各種遺伝子組み換え株を用いて検討したところ、線毛欠失株は付着能を有したのに対し、RgpおよびKgpの完全欠失株では付着能を喪失したことから、線毛が付着因子ではなくジシジパインが付着に強く関連していることが示唆された。これはA. actinomycetemcomitansおよびT.forsythensisとP.gingivalisの共凝集実験において確認された結果と同様であったことから、P.gingivalisの付着能およびバイオフィルム形成能にはジンジパインが強く関与していると考えられた。
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