日本人に最も高頻度(68%)に発現しているHLA-A24を有する口腔扁平上皮癌患者の生検組織から線維芽細胞の培養と癌細胞株(WK2)を樹立し保存した。WK2で刺激した末梢血単核球(PBMC)と標的細胞(WK2または線維芽細胞)との混合培養を行い、WK2特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)による細胞傷害性とIFN-γの産生を有意に認めた。このことはWK2が発現する何らかの癌抗原ペプチドによりCTLが誘導されたことを示唆している。癌抗原ペプチドはHLA-A24と複合体を形成していることが判っているが、ペプチドに断片化される前の癌抗原遺伝子の同定が重要である。従来のcDNAライブラリー法では目的とする遺伝子以外のcDNAが無数に含まれることにより解析方法としては非効率的であった。今回、癌細胞(WK2)と正常細胞(線維芽細胞)のcDNAとmRNAをサブトラクトすることにより厳選されたcDNAの作製が可能となった。また、従来のサブトサクション法はcDNAライブラリー同士をサブトラクトする方法であった。新しい方法としてcDNA合成の過程で、オリゴdTプライマーにRsa Iを組み込んだCDSプライマーと5末端側に付与するためにRsa Iを組み込んだSMARTIIAオリゴヌクレオチドを用いてcDNA(Taget)を作製した。線維芽細胞からのmRNA(Driver)をcarbo-coat plateに吸着させて、WK2からのcDNA(Taget)をハイブリダイズさせて癌関連抗原遺伝子を抽出した。
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