研究概要 |
難病・筋ジストロフィーをターゲットに定め病的骨格筋に治療用タンパク質dystrophinを導入する方法(replacement therapy)の開発研究。導入遺伝子を半永久的に発現するレンチウイルスベクターを用いる点で独創的である。 1.引き続きレンチウイルスベクターの産生系の確立に努めた。プラスミドを用いたトランスフェクション法の条件を決定するために、理化学研究所(三好研究室)から分与されたシステムとともに、イタリア・ミラノNaldini研究室から分与を受けたオリジナルのシステムと、2種類のHEK293T細胞のラインを用いた。導入する治療用遺伝子のサイズを工夫し複数の組み合わせを試した。 2.筋ジストロフィーモデル動物(マウス)の骨格細胞および骨格筋になりうる幹細胞にin vivoまたはex vivoで遺伝子導入をおこなった(Kimura, et. al.)。特にmdxマウスの横隔膜への遺伝子導入では、GFPマーカーを用いた検討で、ほぼ100%に近い効率を得た。治療用遺伝子導入による病理学的、生理学的、動物行動科学的な治療効果を判定する準備ができた。 3.臨床的にDMD患者へ応用する場合最も重要なのは、生命の維持に必要な心筋や呼吸筋の治療であり評価である。マウスでも治療効果の判定に客観的な呼吸機能の解析を求め、臨床的パラメータを検討した。動脈血酸素二酸化炭素分圧、動脈血酸素飽和度にくわえ、生理学的パラメータ(呼吸数、分時換気量、一回換気量、気道抵抗など)を詳しく検討した(lshizaki, et. al.)。 4.筋ジストロフィーの骨格筋病理像では、炎症、線維化、脂肪変性といった修飾が加わり、dystrophin genereplacementだけでは進行した患者の治療が十分ではなく、新たな骨格筋の再生を導き出すことが重要だと考えられる。間葉系幹細胞を効率よく骨格筋に導入する方法、ex vivo療ののち個体に返すこと、またコンビネーションによって効果を増強することができるか、について検討を進めた。
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