研究課題
我々は2001年に心筋と骨格筋に特異的に発現する新しい蛋白質ARPPを単離し、報告した。さらに、最近、ARPP蛋白質の機能解析のため、ARPP遺伝子ノックアウトマウスを作製し、筋傷害を誘導したところ、WTマウスに比べ、ARPP KOマウスでは明らかに壊死に至る筋線維が多く、再生の遅延が認められた。このことは、ARPPが筋傷害に対して保護的に働くことを示唆している。また、傷害筋におけるARPPの発現パターンを調べたところ、通常は細胞質に局在しているが、壊死筋線維周辺の筋線維において、核に強く発現することを発見した。このことは傷害筋においてARPPが核で機能することを示唆している。以上より「ARPPは筋傷害により、核へ移行し、転写調節を介して筋線維の構造維持に関わる」という仮説が得られた。本研究では、筋傷害からの回復過程におけるARPPの分子機能を明らかにするため、核移行したARPPの転写調節標的遺伝子を同定することを目的とする。本年度、私はまず、ARPPが傷害筋において核移行することを免疫組織化学的に詳細に検討し、論文を作成した(投稿中)。また、傷害筋におけるARPPの転写標的遺伝子を同定するため、ARPPノックアウトマウスと野生型マウスよりRNAを回収し、マイクロアレイ解析を行った。その結果、いくつかの候補遺伝子をスクリーニングすることに成功した。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
Cancer Science 98(4)
ページ: 521
Modern Pathology 20(2)
ページ: 199